アパレル産業を事例に経済学をどう考えるか

経済学通論

今回の課題は、アパレル産業を事例に経済学をどう考えるか。

しばらくプリントなしで、レポート→講評を繰り返してみたいと思います。ゆっくり経済と経済学を考えてみましょう。

以前にいただいたレポートをまとめてみました。

今回の課題では、実際に一つの産業や職業部門をとりあげて、経済と経済学を考えてみます。

私がこれまで勉強してきたアパレル産業をとりあげます(説明しやすいので)。簡単にいえばアパレル産業(衣料品)です。

ブログ(上述URL)にまとめたように、経済が「製造(→流通)→販売→流通→消費」だとして、これをアパレル産業やファッション衣料品にあてはめて具体的に流れを書いてみてください。

今回のレポートも140字ちょうどをめざして、簡潔にシンプルに書いてください。文章が長いときは2~3文でまとめると読みやすくなります。

いただいたレポートの傾向をまとめてみます。

自分のレポートに該当したり参考になったりするところは、どんどん吸収してください。

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自分が何のアイテムを述べているかを意識すること

まず、製造するところから始まる。そこから、各ショップに配置され、消費者に向けて販売される。また、販売店のスタッフは消費者にアイテムの購入を促す、つまりは、生産者及び販売者から、消費者に移転させるという意味で、流通していると考えられる。最後に購入したものを身に着ける等で消費される。

「購入したものを身に着ける等で消費」というとらえ方がナイスです。さりげなく具体的に消費を説明しています。

1文目に「始まる」があるので「まず、」の3文字のかわりに「衣服を(製造する…)」に変更。

「、つまりは、」は「。つまり、」へ変更。ここで1字を浮かせるので、「及び」を「および」にして字数は元通り。

「移転させる」の「させる」は使役動詞に読めるので「移転する」。また「という意味で、」は「意味で」だけでOKなので3字が余ります。この時点で合計合計5字が余っています。

余った5字をどう使うか。

今回のレポートで一切「衣服」が出てこないので「消費者に移転」の直前に「衣服を」入れるのがよいかと思います。これで2字が余っている状態。

書いているあいだに自分が何のアイテムを述べているかを意識することが大切です。

つぎに「と考えられる」を削除します。

この時点で8文字が浮いています。この8文字をうまく工夫して140字で書きなおしてください。

アパレル産業を事例に経済学をどう考えるか

商品企画(検討会)は大切だが製造・販売・商品・流通の流れを明確に

ファッションの流れは、「デザイン」→「製造」(サンプル)→「検討会」→「販売」→「流通」→「消費」である。素材を決めて、具体的なデザインを決定し、縫製仕様書を完成させる。そして工場にサンプルを依頼する。そのサンプルを検討会で何回もチェックを繰り返した後に販売に繋がって流通し消費する流れである。

アパレル産業ではたしかにデザインや検討会が大切になります。
「」を多く使っているうえ、デザインや検討会の段階をくわえた分、〔製造→販売→流通→消費〕の流れが散漫になって分かりにくくなっています。

また、〔製造→販売→流通→消費〕の工程全体をまとめて「ファッションの流れ」という主題で名づけていいか、考え直してください。主題はレポートの課題に書いてあるのでザックリ削除していいと思います。

工場にサンプルを依頼する主体が書いていません。この主体から工場へサンプルを送ることも流通です。でも、最終文にはじめて流通が出てきます。「販売=流通」の印象をうけます。

デザイン・製造・販売・消費を端的にのべ直すようにしてください。流通をどう組み込むかも考えてみてください。

これでも字数が足らなければ、「何回もチェックを繰り返した」との「チェック」内容を具体的に書いて、余った字数を埋めるようにしてください。

うまくまとめ直せば、かなり具体的なアパレル産業の経済を描くことができます。

各工程でつくられる品目をおさえる

ファッション衣料品の経済について、初めに服を作る工程として絹や綿などから服を作る製造があり、服を製造した会社が企業や百貨店などに販売し、その企業や百貨店がネットや店舗で第三者に販売し流通して、最後はそれを購入した第三者が製造した服を着ることが消費になる。これが一連の流れと考える。

流通をトータルに描いている点でいいレポートです。

冒頭の「…ついて」まではレポート課題なので削除。

「絹や綿などから服を作る製造」に注目した点はナイスですが、絹や綿が繊維のことなのか、糸のことなのか、また生地のことなのかがわかりません。

繊維栽培・製造、糸製造、生地製造の各工程をコンパクトにまとめて書き直してみてください。

「企業や百貨店」が一文に2回も出てくるのでどちらかを削除。

1文で書こうとせず、このレポートでは3つほどに「。」をつけて3文で書くとさらに読みやすいレポートになるでしょう。

衣服ができるまでの原材料の流れをよくとらえている

始めに、第1段階として衣類を作る為の繊維や糸を生産するところから始まり、第2段階でその繊維や糸を用いて服の素材となる生地を作る「製造」になる。その後、作られた生地が生地から服を作りデザインなどを行った後に小売店等で売る「販売」へ渡り、次売られた商品が買われる「流通」、そして最後に「消費」となる。

全体として、製造、販売、消費の流れをわかりやすく書いています。

流通は「商品が買われる」場面だけではないので工夫が必要です。

文章の構成として「始めに、」からはじまって「第1段階」「第2段階」「その後」とづつきます。

「始めに、」は「次(売られた)」につづくのでしょうか…。語句の距離として離れすぎていますから、「始めに、」は削除。

「「製造」になる」は「までの製造工程がある」くらいでいいと思います。

「作られた生地が生地から」はシンプルにします。すでに生地は作られたことを述べているので、「作られた生地が」を削除。

「服を作りデザインなどを行った」は順序が逆です。デザイン(設計)してから衣服を作ります。

「消費」は「消費者が」や「購入者が」などを入れてほしいところです。

定義ではなく流れを書く

製造(→流通)→販売→流通→消費をファッションに当てはめると、製造は「ブランドから依頼されたものを素材などにこだわり作ること」であり流通は、「製造された服を色々な販売店に送ること」だと思います。そして「販売は送られた服を売ること」であり消費は「その服に袖を通すこと」だと思います。

「服に袖を通すこと」を消費と捉えた点は具体的にイメージしやすいです。

もっとも、スカートやズボンだったらどう書くのとも思いますが。この理由から「服に袖を通す」の説明をもう少し代える必要があると思います。

出だしの「…当てはめると、」まではレポート課題そのものなので削除。

製造に関して、製造者とブランドが同じ人や会社などの主体なら、書かれた内容は当てはまりません。

「素材にこだわる」ことは経済活動で大切ですが、これはどの産業・仕事・段階でも当然のことなので不要。

「」を使って説明すると、他の文献から借用してきた印象をうけます。あなた自身の言葉でゆっくり丁寧に説明すればいいです。

「流通は」や「消費は」のように定義っぽく書かれていますが、これをもう少し「モノの流れ」として書き直せば、わかりやすいレポートになります。

まとめ

今回は5つのレポートを事例にメリットとデメリットをコメントしました。

とにかく、限られた140字に書く語句や工程のバランスにも気を配ってください。

製造、販売、消費にくらべて流通をどう書くかが難しいです。流通のとらえ方や書き方を3点目のレポートから参考にしてください。

経済学の「流通」は難しいようですね。

  1. 「分配」「分布」「配送」などを意味する「Distribution」(ディストリビューション)
  2. 「流れ」「循環」「血流」などを意味する「Circulation」(サーキュレーション)

昔ながらの経済学で流通といえば「1」でしょうが、学生のレポートにもありましたが、私には宅配や倉庫のイメージがあって、「2」のほうがしっくり理解できます。

ただ、サーキュレーションには「流布」の語意もあり、撒き散らすようなイメージももっています。とするとディストリビューションのほうがマシかなぁ…と混乱中。

この記事の続きとして、「アパレル産業から経済活動の循環を理解する」をご覧ください。

この記事が難しかった場合は、次の記事をご覧ください。

中学生向け国語辞典にみる経済学」では、大学生のイメージする経済学を定義づけるために、中学生向け国語辞典にふれて、経済、経済観念、経済的、経済力の意味を考えています。

このうち経済には二つの意味があります。

それぞれを丁寧に説明しています。

経済学通論
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筆者
Seniorn

経済史研究がしたことといえば近代化や西洋化の叙述か拒絶だけでした。西洋に抱きついたか日本で自慰したようです。そこには悲しいくらいの自己愛に満ちた閉鎖的な世界が広がっています。こんな経済史と決別し、大学生の感性から21世紀の経済史をまとめています。

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