大学生が経済学をどう考えているか

広視野の経済学

大学生が経済学をどう考えているか知りたくて授業でレポートを課しました。

いろんな回答があって私の経済学のイメージをまとめ直すきっかけになります。

この記事ではいただいた回答の傾向をまとめて大学生のイメージする経済学を定義づけます。

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レポートの課題

受業生に課したレポートは次のとおりです。

みなさんが経済学をどう考えているか、書いて下さい。文字数は「全角文字140字ちょうど」でお願いします。これまで配布した2つの資料を参考にしてもいいし、参考にしなくてもいいです。

経済学とは経済を扱う学問ですから、経済とは何かもあわせて考えると経済学をイメージしやすいです。

今回はこの点を言いそびれました。

大学生が経済学をどう考えているか

いただいた回答で最も多かった捉え方は次のとおりです。

  • 経済は物や金の流れ
  • 経済学は金やその作り方や活動に関する学説

「経済=金」と考える学生が多いことが分かりました。

また、生産者や流通者よりも消費者をテーマにするコメントが多かったのが印象的です。

大学生は消費者として生活している面が大きいです。経済学が消費者をテーマにすると考える理由はこれだと思います。

また、最近の経済学は生産・流通から消費へテーマが移っています。

  1. 大学生は消費者である
  2. 最近の経済学は消費に関心がある

この2点から経済学をお金と結びつけた消費だと考えがちです。

これには注意点があります。

消費を扱うには販売者(多くは企業)の観点からマーケティングが大切になるため、ビジネスや商業を重視する傾向があります。

ビジネスや商業は商学や経営学の範囲です。

最近では経済学をビジネスの学問だと思う人が多いです。でも、ビジネスは経済学の範囲ではなく、商学や経営学の範囲です。

経済学が金をあつかうとき

もちろん、経済学が金をあつかうことに間違いはありません。

商学や経営学のように金を稼いだり金を管理したりする対象ではないとすれば、経済学はどのように金と付き合うのでしょうか。

経済学が金をとりあつかうのは、金を生みだす面です。

そして、金を生みだす活動とはモノやサービスを金に換える作業です。

モノやサービスを金に換えるにはモノやサービスを準備(用意)することが大切になります。

モノやサービスを用意することは、企業や自営業者からみると製造や営業になります。

営業は製品を販売するだけではありません。顧客との取引を継続したり、宣伝したりします。

経済学とは

生活に密着したかたちで経済を考える学生のレポートがいくつかありました。大切なポイントです。

このポイントをふまえて、これまで考えた経済学のテーマや対象を次のようにまとめます。

  • 経済学はモノやサービスの製造と販売をあつかいます。
  • 製造と販売をつないだり販売を促進したりするのが流通です。モノやカネの流通も経済学で大切になります。流通はネットワークと考えてOKです。
  • 経済学は消費をあつかうこともあります。

経済と経済学

最後に、国語辞典から経済を参照します。

これは中学生むけの国語辞典のうち説明が丁寧なものです。

これを読んで自分のイメージと照らし合わせてください。

①ものをつくる、売る、利用するといった、商品やお金の流通の面からみた、社会の基本となる活動。②お金のやりくる。また、ものをむだにしないこと。林四郎監修、篠崎晃一編修代表、相澤正夫・大島資生編著『例解新国語辞典』第十版、三省堂、2021年、351頁。

大学生の方が多くとりあげたのは①でした。私も①をイメージします。

②の説明は「経済観念」や「経済感覚」というもので、お金のやりくり、損得の勘定、無駄にしないこと、などの意味です。

製造・販売・消費と流通

この国語辞典の内容と私のイメージがズレているのは「ものをつくる、売る、利用するといった、商品やお金の流通の面」です。

商品や金の流通面にモノを作る・売る・使う活動が含まれています。

経済学の用語では作る・売る・使うは、それぞれ製造(生産)、販売、消費にあてはまります。

私のイメージは

製造(→流通)→販売→流通→消費

でした。

たぶん国語辞典は作る・売る・使うのどれにも流通が関わることを言いたいのでしょう。

学生のレポートに「経済学が実生活の営みでもっとも切り離せない流通」を学べると書いてありました。

作ったり売ったりする活動は会社やお店のやることで、家に来るのは宅配業者というイメージでしょうか。少し極端にいえば、製造・販売が家の外、流通と利用が家の中ということかもしれません。

20世紀に青春を送ってしまった私には斬新なアイデアだと思いました。

経済学は商学や経営学をふくむか

また、私のプリントでは商学や経営学を含むのが経済学という風に書いた節があります。

もともと分かれていなかったものが、20世紀のあいだにだんだん、経済学から商学や経営学が大きく独立していきましたから、私の叙述はこの辺で揺れています…。

次の課題

次の課題では、実際に一つの産業や職業部門をとりあげて、経済と経済学を考えてみます。

アパレル産業を事例に経済学をどう考えるか」をご覧ください。

この記事が難しかった場合は、次の記事をご覧ください。

中学生向け国語辞典にみる経済学」では、大学生のイメージする経済学を定義づけるために、中学生向け国語辞典にふれて、経済、経済観念、経済的、経済力の意味を考えています。

このうち経済には二つの意味があります。

それぞれを丁寧に説明しています。

広視野の経済学
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筆者
Seniorn

経済史研究がしたことといえば近代化や西洋化の叙述か拒絶だけでした。西洋に抱きついたか日本で自慰したようです。そこには悲しいくらいの自己愛に満ちた閉鎖的な世界が広がっています。こんな経済史と決別し、大学生の感性から21世紀の経済史をまとめています。

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