この記事では、野口悠紀雄の「国語の勉強」をヒントに、イタい大学生が書いてしまうメールの内容とは何かを明示しています。
そのうえで、イタい大学生にならないためのメールの書き方をわかりやすく実践的に書いています。
この記事を初めて書いた時期は2018年、とある大学で初年時教育のゼミをもったことがきっかけです。ここに出す事例はそのゼミ生のものや、同年度に教えていた講義の履修生のものです。
いろんな大学で教えていると、電子メールやラインの書き方と使い方を知らない学生をちょくちょく見受けます。
- 電子メールやラインを使えるが距離感が崩壊する
- 電子メールやラインを書けるが一言目でコミュ障を来たす(またはバレる)
などの方のために、シンプルな書き方を提案します。
野口悠紀雄の「国語の勉強」
先日、野口悠紀雄という先生が書いた勉強方法のホームページ(Note.com)をみつけました。
この先生はパソコンやデジタルファイルなどの情報整理の達人で、私は20代に何冊か本を読んでかなり助けられました。
小中高校生が勉強するにあたって情報を整理していくという点から勉強方法を書いているので分かりやすいと思います。大学生が勉強を進めるにあたっても役立つので、いろいろ読んでみてください。
YouTubeとも連動しているので、映像も見ながら国語の勉強方法を学んで、電子メールやラインの書き方と使い方に応用してほしいと思います。
『野口悠紀雄の小中高生に語る「超」勉強講座』 第5回 【国語の勉強(その1)】
20分ころ
- 150字:インプット訓練は不要ですが、アウトプット(書く)練習は必要。
- 1500字:高校までの教育では不足。感想文や理解テストだけにとどまっています。
- 15万字:書けとはいいませんが、読める必要があります。
上記は私も同感します。
ただし、野口氏は新聞の社説を1500字の事例に勧めていて、私は反対です。
何が大切か分からない新聞記者たちが書いた新聞は、読む必要がないからです。あとになって役立つ保証もありません。
難しい文章で読むべきは本です。とくに新書は数日に分けて読めば負担が少なくてすみます。
30分ころ
中国語を母語にする人たちがよくいうように、日本語は漢字かな交じり文なので、要点をつかみやすいです。
また、(スマホやパソコンと)デジタルの時代では漢字を書くことよりも読むことが大切ですから、意外に日本語の文章は早く読めます。速読訓練は不要、自分でできます。
38分ころ
デジタル時代に教師側は資料を作りやすくなり、学生側はスマホで黒板を撮影します。野口氏は撮影することで安心することを危惧しています。
ここまで同感ですが、もう一歩進んで、写真をGooglePhotoなどのクラウドサービスへあげて(オープンにはしないこと)写真にタグづけやキーワードを設定して整理するとOK。
ただし、手書きメモをノートに書けという野口氏の意見も併用しましょう。
『野口悠紀雄の小中高生に語る「超」勉強講座』 第6回 【国語の勉強(その2)150字の文章を書く】
3種類の敬語を使えるようになりましょう。
敬語を間違うと、野口氏は「取引先から無礼と思われることもある」と仰っています。
そういう場合もありますが、私が敬語を勧める理由は次のとおりです。日本語は主語を省略することが多いので、敬語を使わないと分かりにくいことがあります。
大学によって偏る「コミュ障」
大学によっては、電子メールやラインの書き方や使い方をきちんと指導している大学があります。
他方で、電子メールのアドレスだけ与えて後はほっておくという大学もあります。
前者の大学ですと1000人の学生を相手に会話しても何の問題も起こりません。
コワメンドイのは後者の大学です。
「お前だれやねん」も分からないまま(名乗り方もわからないまま)、いきなり文章攻撃してきますので。
大切な点は、いわゆる「コミュ障」と偏差値は関係がないということです。残念ながら偏差値は対人能力を上げることに無関係です。
話を戻します。
コミュ障であろうとなかろうと、電子メールやラインはスムーズに進めるにこしたことはありません。
電子メールやSNSの書き方・使い方:大学生むけ
電子メールとSNSの書き方ですが、両者の性質の違いを無視して、まとめます。
まっとうな電子メールやラインの書き方
お互い慣れ合いじゃない関係を想定して、電子メールにもラインにも共通する点を列挙します。
- 質問はポイントを押さえる。
- 質問に依頼を重ねない。
自分の質問に対して自分がどこまで作業を進めているかを相手に明記します。すると相手は答えやすくなります。
1と2をバッティングさせると、話の中心が分かりにくいです。
コミュ障大学生の会話の多くはメリハリが崩壊して、ハリハリになっていること(テンパってる)上に、相手にはメリメリになっているのが特徴です。
痛すぎるグループラインでのミス
たとえば、グループラインにおいて、次のような事例がありました。
- 学生A「レポートの文字数は何文字ですか?できるだけ早く教えてほしいんですけど。」
- 教員「履修要項に載っていませんか?」
- 学生A「(履修要項を)見てません」
- 教員「…」
で会話が終わることが多いです。
学生Aの1発言目はグループラインで行なう質問としてOKです。
なぜなら教員は1度答えれば済むからです。これを個別チャットや電子メールで尋ねられると手間がかかるのでウザいです。
グループチャットで痛いのは学生Aの2発言目です。「早く教えろ」と教員を急かしていますね。しかも他人がたくさんいるグループチャットで。
さらに、相手を唐突に急かしておいて、履修要項を見ていない点に自分の非を認めません(笑)。
となると、上手くいえませんが「自己中暴」的なのでこれ以上は関わる必要はありません(と教師は判断します)。関わり続けても、こちらの話を聞かずにこちらを攻めることばかりが続くからです。
学生のやるべきこと(履修要項を見ること)をせずに教員に2発言目で急かすというのは、急かされた方は会話をする気がなくなります。
痛すぎる電子メールと書くべき項目
こういう学生は、次のようなメールにも対応を間違えます。
レポートはGmailに送ってください。1行目に呼び掛けと軽い挨拶(○○先生、こんにちは、など。)、大学名、学部名、学籍番号、氏名を2行目、3行目に《該当科目名のレポートを添付します》という具合に書くと話がスムーズです。
どんな間違いが多いかは次です。
- メールのタイトルがない(スパムか捨てよう、ポイ!)
- 呼びかけがない(誰に書いてんねん?)
- 挨拶や自己紹介がない(お前だれやねん?)
- メール本文にレポートを貼りつける(1段落の場合もあり)
などなど。
以上、採点対象にしにくいです。
会話のポイント
とにかく、自分の努力痕跡を簡単に伝えて迷い点を明記することです。そうすることで、相手は自分が何をすればよいのかが分かります。
そうすれば、グループチャット(グループライン)でも会話が止まりにくく、話は弾むでしょう。負のスパイラル(全てが悪循環)を生み出さないためにも、立ち止まってメリハリを考えることが大切です。
熱弁はできるだけ避けましょう。メリハリが薄れます。
まとめ
シンプルでスムーズに話を進めることが大切だという点を忘れてはなりません。
その上でメリハリを上手く盛り込んでいければOKです。
履修生は私の講義やゼミから、インターネットの使い方やメリハリある対人トーク力を学んでいってください。
イタい大学生が書いてしまったラインでの実例
配慮学生でも公欠でもない学生の一部が初回の授業に欠席したうえで、心配のあまり初回の授業後にメールやSNSメッセージを送ってきます。
もっとも不可思議だったメール
今まで私が受信したメールでもっとも不可思議だったメールをご紹介します。2018年度です。
これだけの文章しか書けていないメールに、おかしい点はいろいろあります。
- メールの相手を書いていない。
- 学籍番号がない。
- 姓しか書かずフルネームじゃない(××の箇所)。
- 履修科目を書いていません。
欠席が本当がどうかの事実を確認できない時点で教員に依頼しています。
初回の授業を欠席しておいて、担当教員に不躾に依頼をしています。
それに、「為」が同一文章内に2回出てきて、日本語ヘタ。
大学へ行けないくらい体調不良なのに欠席当日にメールしています。
「聞きそびれて」るのは出席したうえで聞きもらしたときに使う言葉であって、欠席したうえで使う言葉ではありません。
欠席しているのですからすべて聞きそびれたことになるので言い訳や理由として論理が崩壊しています。
そこで私は次のように返事しました。
これに対する学生の返事は次のとおり。イタさが増している点を確認できます。
イタさを列挙します。
「承知」は謙譲語なので「承知いたしました」ではなく「承知しました」でOK。
1度目のメールで担当者へ勝手に依頼したうえに、今度は一方的に「次の授業の際改めて質問」と日程を指示しています。
いったい、初回の授業に欠席した学生と、担当教員との間に、どのような人間関係が構築されているのでしょうか。
最近は大学ランクを問わず、著しい自己中型コミュ障をきたす学生が急増しており、無根拠な上から目線が横行しています。
そのうえで自分が何をしたいのかを伝えられない学生が多すぎます。
上記のイタメールに対して私は次のように答えました。
他にも痛い事例がしばしば見られます。たとえば次のとおり。
お世話になっていると感じるならば「なってます」ではなく「なっています」と書くべきです。
あと、ビジネス関係ではないので、お世話という単語は避けた方が良いと思います。
「お世話」とは便利な言葉ですが、簡単に使うと意味が軽薄になっていきます。適当な奴が書いているとしか思えません。
次の「まとめ」に代替案を出しておきます。
まとめ
メールの出だしは次のような事項をはっきりと書きましょう。
この文章で大事なのは「教授」や「准教授」などの役職名は書かない方が良いことです。
理由は次のとおり。
- 先方の役職が変わっていることに気づかない場合がある。
- 「先生」と伝えるだけで通じやすい。
- 「学生」に対応する語彙は「先生」。
大学の先生には「教授」以外にも「専任講師」「嘱託講師」「非常勤講師」「特任助教」「客員教授」などの役職があります。
役職を間違えると多くの先生は「適当に教授と言っておけば間違いないと思ってるんだろう」とウンザリします。とくに立場的に低い「専任講師」「非常勤講師」「特任助教」の先生たちへ「教授」はありえません。
ついで、次のように自己紹介しましょう。
そして、メールした意図を書きましょう。たとえば次のとおりです。
すでに指摘したとおり、唐突な依頼はダメです。
かといって意図をしつこく書き過ぎると読んでいて疲れるのでシンプルに。
なお、SNSやプライベートなメールアドレス(Gmailなど)を使うよりも、大学から発行された電子メールでメールを送信するのが正しいです。
以上がメールの基本的な書き方です。
といっても、変なメールだけが来るわけではありません。たまに学生方々から授業でのトークに対する嬉しい反応メールをもらうこともあります。
私の担当する各大学・各科目の学生は、メリハリや遠慮といった態度を、今一度ふりかえって確認してみてください。
そのうえでコミュニケーション能力やトーク力の身につけ方を私の授業から学び取ってください。
大野晋の「日本語練習帳」
日本語教師養成講座でお世話になった先生が紹介していた、大野晋の「日本語練習帳」の本を急いで Amazon で買いました。
なかなか面白かったのでご紹介いたします。
日本語の研究者が書いた本ですからとても読みやすかったです。
人の文章をどう読み取るかということと並んで、日本語を澄明に、区別明瞭に書くにはどうすればいいか、その入り口をお話しました。大野晋『日本語練習帳』岩波新書、ii頁
本書では、まず、「考える」と「思う」の違いは、冒頭から細かく立ち入って丁寧に述べています。考え込む、思い込むといった言葉まで含めていて、読み応えがありました。
ついで、途中の「文法なんか嫌い」という章の中で40ページを割いて述べているのが、日本語最大級に難しい「はが構文」についてです。
「は」が主題の設定と既知情報、「が」が前後接続と新情報、という違いをはじめ、具体的で易しい例文を使って丁寧に、はとがの違いや、はとがが混ざった文をどう考えるかという点などを述べています。
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