日本語の歴史は国語教員資格に必要なものです。
日本語の歴史(日本語史)は漢文や古典をふくむため日本語学校では教えません。また、日本語教育能力検定試験でも出題は少ないです。
しかし、国語教師だけでなく日本語教師にも知っておいてほしいテーマです。
なぜなら、漢語や外来語の歴史と複雑さを教師が知ることで、学生目線で言語学習に取り組めるからです。
日本語の歴史(日本語史)の概説
日本語教育は国語教育の影響を受けてきました。
国語教育は古くて固く、また歴史教育の一環ですから、日本語の歴史として時代区分を想定しています。
時代区分は5段階を想定しています。呼称も古いです。
- 上代飛鳥~奈良時代漢字導入以前は文字資料に乏しく不詳。漢字導入後、万葉仮名(真仮名/まがな)による資料があります。『古事記』『日本書紀』『万葉集』など。
- 中古平安時代初期が漢文全盛期、中期になると仮名文字の発明から和文資料が増えました。古典日本語の代表とされる『竹取物語』『伊勢物語』『源氏物語』『枕草子』『土佐日記』『古今和歌集』など。
- 中世鎌倉・室町時代この時代に古典日本語が崩壊しました。識字層が少し拡大して資料の書き手が武士や庶民にまで広がりました。『平家物語』『方丈記』『徒然草』など。
- 近世安土桃山・江戸時代近代日本語が芽生えました。文化の担い手が庶民に。 商業出版がスタート。『好色一代男』『日本永代蔵』『曽根崎心中』など。
- 近・現代東京遷都以後言語政策(日本語の人為的変化)が導入され日本語の近代化が進みました。標準語が制定され中央集権化が企図。新知識が翻訳漢語・外来語などの新語から導入。義務教育をとおして国語教育が整備。メディアの発達によって文字表記が改革され、音声言語が地方へ普及。
文字要素などの関連用語:言葉に関するモノとコト
言葉に関するモノ(用語)
漢字
かんじ。古代中国でつくられ、今も使われている文字。一文字ずつが意味を表わします。
古代の日本の伝わってから、日本語の文字としても使われてきました。平安時代に、漢字をもとに平仮名・片仮名がつくられ、漢字仮名まじり文が書かれるようになりました。
真名(まな)、本字ともいいます。
万葉仮名
まんようがな。意味には関係なく、漢字の音訓を借りて、日本語の音を表わした文字。
平仮名や片仮名が作られる前に使われていました。『万葉集』に多く使われていることから万葉仮名といいます。
ほかに、真仮名(まがな)、真名仮名(まながな)、男仮名(おとこがな)、借字(しゃくじ)とも。
漢文
かんぶん。中国古典の文章を日本でいう言葉。また、中国古典を真似て日本で作られた詩や文章も漢文といいます。
仮名
かな。平安時代の初期に日本でつくられた文字。
万葉仮名として使われた漢字をもとに、漢字全体を崩したり、一部分をとったりして作りました。平仮名と片仮名の2種類があります。
和文
わぶん。日本語で書かれた文章やその文字。日本文とも。
日本語
にほんご。日本で昔から使われ、今も日本国の公用語として使われている言語。標準語のほか、各地に方言があります。
古典日本語
こてんにほんご。古い時代の日本語。だいたい、中世までの日本語をさします。
近代日本語
きんだいにほんご。今に近い日本語。江戸時代につくられはじめ、20世紀中頃(戦後)に整備されました。
標準語
ひょうじゅんご。国の国語として、発音・単語・文法などのすべての面で《このように言ったり書いたりすると良い》という、使い方の手本となる言葉。
国民生活の標準ともなる言葉なので標準語といいます。共通語や公用語とも。
翻訳漢語
ほんやくかんご。
翻訳は、ある国の言葉で話されたり書かれたりしたものを、他の国の言葉におき換えること。
漢語は、音読みの漢字を使って書き表わす言葉。古い時代に中国から伝わった言葉(外来語の一種)と、あとになって日本で新しくつくった言葉(和製漢語の一種)の2種類があります。
翻訳漢語とは、欧米から入ってきた言葉を日本語に翻訳するとき、カタカナでなく漢字表記にした言葉です。和製漢語の一種。たとえば「会社」「鉄道」「電話」など。
外来語
がいらいご。
外来語とは外国語から自国語の体型に採り入れられた語で、借用語とも。日本語ではカタカナで表記します。
初めは外国語として入り、のちに自国の言葉として外来語を使うようになります。対語に和語・漢語、類義語にカタカナ語。
- 日本語のなかの外来語は欧米語(カタカナ語)が中心
- 和製英語も外来語
- アイヌ語や古代朝鮮語も外来語
- 近現代以降に中国から入った語も外来語(前近代の中国から入った語は日本語)
20世紀に外来語は年々増えていました。
かなり普及した外国語は外来語というイメージ。ただし、外来語の発音が外国語に近いとき、厳密に区別できないものも多いです。
新語
しんご。新しくつくったり、外国から入ってきたりして使われるようになった言葉。
対語に古語。
言葉に関するコト(事柄)
古典
こてん。古い時代に書かれた書物。
商業出版
しょうぎょうしゅっぱん。出版は、文章・写真・絵などを書物や雑誌などの印刷物にして、公開すること。商業は、販売を目的とする行為。商業出版は売ることを目的に出版すること。
言語政策
げんごせいさく。政府が自国の言葉を広めたり良くしたりするために立てる計画。たとえば日本国では「現代仮名遣い」や「常用漢字表」など。
近代化
きんだいか。社会の仕組みや人の考えや産業などを新しく合理的なものにすること。また、結果として合理的なものになったこと。
中央集権化
ちゅうおうしゅうけんか。政治上の権力を地方に分けず、中央の政府に集中させること。
対語に地方分権・地方分権化。
義務教育
ぎむきょういく。全国民が自分の子供に受けさせなければならない教育。
日本国では小学校6年・中学校3年の合計9年間が義務教育の期間になっています。
国語教育
こくごきょういく。国語の教育。
国語は、各国家や各民族が社会で使っている言語。
日本国では国語は日本語です。
メディア
めでぃあ。情報を伝達したり、記憶・保存したりするための媒体。
文字表記
もじひょうき。文字を書き記すこと。
文字…口で話たり耳で聞いたりしている音声の言葉を、目で見て分かるように表わした記号。
音声言語
おんせいげんご。口で話たり耳で聞いたりして伝える音声の言葉。
話し言葉の専門的な言い方です。ふつう、文字言語よりも先立ちます。
まとめ
日本語の歴史(日本語史)は漢文や古典をふくむため日本語学校では教えませんし、日本語教育能力検定試験でも出題は少ないです。
それでも、国語教師だけでなく日本語教師にも知っておいてほしいテーマです。
なぜなら、外国人留学生にとって日本での生活は外来語を使ったコミュニケーションが多く、漢語や外来語の歴史と複雑さを教師が知れば、学生目線で言語学習に取り組めるからです。
日本語の歴史
日本語の歴史(日本語史)を総説と時代史でまとめています。
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