このページでは、日本語教育を推進している政府機関や法人組織をご紹介しています。
日本語教育を推進する機関をとりあげ、大学日本語コースや日本語学校などの学校はとりあげていません。
日本語教育関連機関にくわしくなる必要はありませんが、各機関が日本語学習者や日本語教師むけに実施するイベントは有益です。
日本語教育を推進する政府機関や法人組織
国際交流基金(Japan Foundation)
国際交流基金は日本語教育・日本語学習を促進する中心的な機関です。
学術や芸術などの文化交流、日本語教育や日本研究の助成を含めた交流事業を行なっています。
JF日本語教育スタンダード、JFにほんごネットワーク、EPA(経済連携協定)日本語予備教育事業など。
詳しくはこちらをご覧ください。
国際日本語普及協会(AJALT, Association for Japanese-Language Teaching)
公益社団法人国際日本語普及協会。
1970年、当協会の前身となる日本語教育研究会「西尾グループ」が設立され、1977年に社団法人国際日本語普及協会、2010年に公益社団法人となりました。
ビジネス関係者・大使館員・学術研究者・技術研修生・難民・年少者などを対象に、日本語学習に関する次の事業を行なっています。
- 日本語教育
- 教員養成プログラムを実施
- 地域の日本語教育を支援
- 各種の調査研究活動
- 教材開発と出版活動
『Japanese for Busy People』『Japanese for Young People』『あたらしいじっせんにほんご』シリーズ、 DVD教材『ようこそ!さくら小学校へ~みんななかまだ~』 などの教材を発行しています。
海外産業人材育成協会(AOTS)
一般財団法人海外産業人材育成協会は海外人材育成事業を実施する機関。
英語で「The Association for Overseas Tachnical Cooperation and Sustainable Partnerships」、略して(AOTS)。
海外技術者研修協会時代に編集された日本語教科書『日本語の基礎』は産業技術研修生むけのテキストで、1973年に刊行されました。文法積み上げ式の教科書でしたが、文型の汎用性があったことから人気が出て、いまの『みんなの日本語』につながっています。
国際協力機構(JICA)
独立行政法人国際協力機構、通称ジャイカは、1974年に国際協力事業団として設立されました。
英語で「Japan International Cooperation Agency」、略してJICAです。
①技術協力、②有償資金協力(円借款)、③無償資金協力の援助手法を一元的に担っています。
また、④ボランティア派遣、⑤国際緊急援助、なども行なっています。
ボランティア事業には、有名な青年海外協力隊、シニア海外ボランティア、日系社会青年ボランティア、日系社会シニア・ボランティアがあります。この関係から日本語教育分野での教師派遣も行なってきました。
昔から、ジャイカがとりくむ課題は大きすぎました。
20世紀世界で大きな問題だった南北問題(貧困国と富裕国の格差)から、近年は、グローバル時代を反映して事業内容が細分化・多角化しています。大きなカテゴリーでいえば、地球全体の環境・気候や女性差別の撤廃などです。
ジャイカの課題がさらに大きくなりました。
とくに環境・気候面でターゲットを地球全体としてしまったので、今後、どのように組織が成り立つのか、不透明なところがあります。
こういう事情もあって、ジャイカは、民間企業、地方自治体、大学・研究機関、NGO・市民社会、他の公的機関、他ドナー、地域機関、新興国などと戦略的パートナーシップを提携し、拡大・深化を図っています。
国際人材協力機構(JITCO)
公益財団法人国際人材協力機構は2020年4月にこの法人名に。前身は国際研修協力機構でした。
これまで、外国人技能実習生・研修生の受入れを行なおうとする・行なっている民間団体・企業や諸外国の送り出し機関や派遣企業にたいして、総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行なっていました。
日本語教育については、技能実習生を受け入れる主体向けに、日本語教育を行なうポイントを提示したり機会創出を提供したりするサービスが中心です。
その観点から、日本語指導オンデマンドという日本語指導を教育するサービスを実施しています。
日本語指導オンデマンドとは、国際人材協力機構の日本語教育専門スタッフが講師として学習場所やセミナー会場に訪問するシステムです。技能実習生への日本語指導に関するセミナーによく使われています。
外国人技能実習機構(Organization for Technical Training)
技能実習制度による人材育成をとおして国際協力を推進する組織です。
外国人技能実習機構の設立根拠
外国人技能実習機構は2017年1月に設立された新しい組織です。
- 設立根拠法…外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(2016年法律第89号)
- 主務大臣…法務大臣と厚生労働大臣
外国人技能実習機構は、外国人の技能・技術などの修得に関して技能実習の適正な実施や技能実習生の保護を図ります。
技能実習計画の認定、実習実施者・監理団体への報告、実習実施者の届け出の受理、監理団体の許可に関する調査、技能実習生に対する相談援助、転籍の支援、調査研究などを行なっています。
国際人材協力機構と外国人技能実習機構の違い
ひとつ前に書いた国際人材協力機構(ジツコ)と外国人技能実習機構の違いですが、目的はかなり似ています。
いずれの機構も、外国人技能実習を実施するための支援活動をおもな事業にしています。とくに、実施主体にたいする啓蒙活動や、実習生にたいする保護活動が中心です。
目的や事業内容が似ているので、法人格やなどの枠組みで比べてみます。
外国人技能実習機構は認可法人です。民間の発意によって設立され主務大臣の認可が必要になります。
これにたいし、国際人材協力機構(ジツコ)は1991年の国際研修協力機構から続いている組織で公益財団法人。「公益法人認定法」にもとづき公益社団法人か公益財団法人に認定されたものです。
両者をはっきり区別する根拠が難しいのですが、国際人材協力機構(ジツコ)のほうが規模が大きく、政府機関色が強いかと。
青年海外協力隊(JICA海外協力隊)
青年海外協力隊(JICA海外協力隊)とは、JICA(独立行政法人国際協力機構)が実施する海外ボランティア派遣事業と団体です。
1965年の派遣開始から2020年3月まで、日本語教育隊員3275人(累計人数)が70カ国へ派遣されました。
日本学生支援機構(JASSO)
独立行政法人日本学生支援機構は2004年に文部科学省所管の独立行政法人として発足しました。
英語で「Japan Student Services Organization」、略称は「JASSO」です。
独立行政法人日本学生支援機構法を根拠として事業を行なっています。
各前身の事業
- 日本育英会…日本人学生への奨学金の貸与
- 日本国際教育協会…日本語能力試験の実施、留学生会館の運営
- 内外学生センター…留学案内・アルバイトの紹介
- 国際学友会…留学生の受け入れ
- 関西国際学友会…日本語教室の運営
です。
日本育英会が浮いた形ですが、現在は留学生への奨学金の貸与も行なっています。
おもな事業
- 奨学金事業…奨学金の支給・貸与と回収
- 留学生支援事業…①海外への留学、②日本への留学、③日本留学奨学金、④日本留学支援
- 学生生活支援事業…①キャリア教育・就職支援、②障害学生支援など
日本学生支援機構が行なっている日本語教育関連の事業は、2④の「日本留学支援」に含まれます。具体的には日本留学試験を実施しています。
日本学生支援機構と同時に設立された日本国際教育支援協会(JEES)は、留学生に対する支援事業のほか、日本語能力試験(国際交流基金と共催)と日本語教育能力検定試験を実施しています。
国立国語研究所:NINJAL
日本語学・言語学・日本語教育研究を中心とした研究機関です。
英語で「National Institute for Japanese Language and Linguistics」、略称は「NINJAL」です。
1948年に国立国語研究所設置法にもとづき設立され、2001年に独立行政法人になりました。
一時廃止が検討されたのですが、2009年に大学共同利用機関法人「人間文化研究機構」に移管され、辛うじて存続しています。
組織の構成
2022年3月現在、国立国語研究所だけで7つの研究系・センターを有しています。
- 理論・対照研究領域
- 言語変異研究領域
- 言語変化研究領域
- 音声言語研究領域
- 日本語教育研究領域
- 研究情報発信センター
- コーパス開発センター
国立国語研究所は、おもに日本語教育に関する情報収集、学習者のコミュニケーションに関する実証的な研究などを行なっています。
収集した言語資料・音声資料をコーパスやデータベースとして公開しています。
これらコーパスやデータベースは日本語研究者だけでなく日本語教師にも有益な資料です。
コーパスの種類
- コーパス…言語を分析するための基礎資料として、書き言葉や話し言葉の資料を体系的に収集して研究用の情報を付与したもの
- オンライン辞書…オンラインで検索できる辞書・用例集
- 言語地図…言語の多様性・分布を地図に表現した資料
- 画像・PDF…方言地図や貴重書の画像ファイル,論文のPDFファイルなど
- ツール…言語資料を扱うためのプログラムやWeb上で利用するツール
- カタログ…図書・研究資料などの書誌情報を中心とする資料
- その他データ…各種言語調査データ
データベースの種類
- 現代日本語…現代の標準日本語に関連する資料
- 日本語教育・日本語学習…外国人に対する日本語教育に関連した資料
- 方言と言語の多様性…日本語の方言と言語の多様性を対象とした資料
- 日本語史…日本語の歴史を研究するための資料
- 研究文献…日本語研究・日本語教育に関する研究文献の情報
- その他…図書・研究資料などに関する資料
観光庁(Japan Tourism Agenty)
2007年1月に施行された観光立国推進基本法をもとに、国土交通省の外局として2008年10月に設立されました。
2017年3月に閣議決定した「観光立国推進基本計画」にもとづいて、現在、次の政策を行なっています。
- 諸外国にたいして日本国政府を代表して対外的な発信力を強化
- 長官のリーダーシップによって縦割りを廃し、政府をあげての取組みを強化
- 地域・国民にたいして、観光に関するワンストップ的な窓口
国土交通省の関係で、観光業をつうじた地域経済の活性化にも力を入れています。
観光に関わる政府機関には、ほかに日本政府観光局(JNTO)があります。この機関は海外主要都市に事務所を設置して外国人旅行者の誘致活動を行なうものです。外国人観光客にたいして、観光庁がプル(引く)であり、観光局がプッシュ(押す)という役割分担になっています。経歴は観光局のほうがかなり古いです(1964年に設立)。
米国国務省日本語研修所
アメリカ合衆国(USA)政府国務省が1952年に設置した日本語・日本文化研修の施設。神奈川県横浜市山手町にあります。
受講対象は、米国国務省の外交官・配偶者)、米軍地域担当専門官などの政府職員、入学が認めらた各国政府からの委託研修生などです。
おもな教育内容は、①卒業後の職務遂行に必要な日本語能力、②政治・経済・軍事・外交・文化などの幅広い分野における日本事情の理解、この2点です。
研修期間は原則として10か月間、クラスは月曜~金曜の毎日6時間、L.L.学習クラスをのぞいて1~3名の少人数クラス形式で授業を行なっています。
英語名で「UNITED STATES DEPARTMENT OF STATE FOREIGN SERVICE INSTITUTE JAPANESE LANGUAGE AND AREA TRAINING CENTER」。初代所長はエレノア・ハーツ・ジョーデン(Eleanor Harz Jorden)。
まとめ
このページでは、日本語教育を推進している政府機関や法人組織をご紹介しました。
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日本語の歴史
日本語の歴史(日本語史)を総説と時代史でまとめています。
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